映画やテレビ番組を制作する場合には、 カットと呼ばれる短い時間の場面を順に組み合わせることで、 話しの流れやリズムの創造、時間や距離の 省略、場面の強調、登場人物の心理描写などをおこなっている。 これらのカメラワークは、 動画像の面白さや見やすさを決定する重要な要素となっている。 このため,3DCG (Three Dimensional Computer Graphics) においても、 カメラワークの決定は重要な課題である。 しかし、3DCG アニメーションではカメラの動きに実世界のような制限がない ため、 視点がむやみに動くといった落ち着きのない映像を生み出す危険性が高い。 したがって、3DCG アニメーションでも現実のカメラワークと同様に、 被写体や表現したい内容に応じた映像表現手法を適切に使って カメラの動きを決める必要がある。 この仕事の一部もしくは全部を計算機によって自動化できれば、 カメラワーク設計の手間が省略できる。 特に、コンピュータゲームのような物体の位置や動きが動的に変更される 場合には、 カメラワークの自動生成は極めて有益な技術となる。
本研究では 3DCG においてカメラワークを自動生成する手法及び カメラワークの設計を支援する手法を提案する。 提案手法では、映像文法に基づいて カットの提案・追加提案及び評価を行う仮想的な演出家を定義する。 各演出家は、独自のポリシーに基づき、 場面の種類やそこに含まれる物体の位置・形状といった 3 次元モデル情報を使っていくつかのカットを提案する。 演出家は他の演出家の提案したカットに自己の案を追加提案することも行う。 さらに、提案されたカットの 1 つ 1 つに評価を与える。 システムは評価の高いカットをつないで複数のカメラワークを作成する。 そして、それらのカメラワークを評価し、 最も評価の高かったカメラワークを採用する。 本手法を計算機上に実現して映像の生成実験を行い、 適切なカメラワークを生成できることを確認した。