氏名: 益村明人

論文題目: 初期消火訓練のためのVirtual Reality環境


論文概要

背景および目的

火災時に適切な消火活動を行うには、あらかじめ十分な訓練を積んでおく必要があ る。しかし、炎を実際に扱う訓練では、参加者が負傷する危険性がある。訓練は状 況設定を変えて繰り返し行うことが望ましいのだが、それには費用や労力のコスト がかかる。また、煙や消火剤に含まれる有害物質で被験者の健康が害される心配も ある。そこで、本研究では、仮想空間で消火訓練を行うシステムを提案する。

本研究における手法

一般の人が初期の室内火災に遭遇した場合を想定して、仮想空間で消火訓練を行う システムを提案する。訓練に使う消火器のホース先端には磁気センサが取り付けら れ、位置と方向を検知できるようになっている。また、レバーにはスイッチがつけ られており、訓練者の操作を検出する。被験者の頭部にも磁気センサがつけられ、 位置と視線方向を検出する。これらの情報からCG映像を作成し、HMDを通して提示す る。

現実に近い火炎の成長や熱の放射による延焼をリアルタイムで表現するため、可燃 物体を大きさに応じて複数の部分に分割し、部分ごとに発熱速度を設定する。そし て、その部分ごとに放射量と受熱量を計算し、それに応じて炎の大きさを変える。 また、ホースの向きから放出された消火剤の三次元的な分布を求め、消火剤の量に 比例して火源の発熱速度を減少させることで、消火をシミュレートする。図1にそ の一場面を示す。

以上の手法により、実世界と同様の消火器操作が行える。

本システムと実際の消火の比較実験

実際の炎に対する消火訓練と、本システムを使った消火訓練とを同じ被験者に体験 させ、アンケートにより評価を行った。その結果、火災の成長モデルや消火モデル については、視覚的な不自然さは認められなかった。しかし、被験者に炎の恐ろし さを理解させるためには、熱や音、臭いなどを表現することが必要だと感じられた 。


図1 本システムの出力画像


目次に戻る